『女性の平等な権利に対しての提言』
国連の友 理事 アンワルル K.チャウドリー大使インタビュー
【前国連事務次長 元国連安全保障理事会(安保理)議長】
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(2010.9.15 ジャパンタイムズ)
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Resolution1325 安保理議長声明
今年の10月は、女性の為の平和及び安全保障に関する安全保障理事会(安保理)決議(Resolution1325 女性、平和、安全保障に関する決議)が採択されて10周年目にあたります。 国連創設から55年の節目の年の2000年、安保理は初めて紛争後の平和構築に女性が平等に関与する必要性を表明しました。
2000年、2001年度の安保理議長のチャウドリー国連大使は安全保障と平和における男女平等に関する議長声明を発し、国連決議 Resolution1325の採択に多大なる貢献をされました。
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― この10年間、Resolution1325の推移を
どう感じますか?
『この10年間で世界は女性と少女によって、より安全で
平和になったのか? 残念ながら、そうではない…。
国際的にも何も劇的な変革は起きていないのが
現実です。』
― 日本国は?
『日本国もこの問題に対して何の行動も起こしていない
と思われている。
政府の関係者も言葉ばかりで、肝心な行動が伴わって
いない。日本の政府は日本国内でこの決議の実現化に
向けて、遅れを取り戻す為にも早急に国家行動計画を
進めるべきである。
日本の市民社会は、男女平等な社会参加への関心を高め、先を見越した行動、及び啓発活動をより積極的に行う必要があるだろう。』
― 女性の社会参加と新時代
『女性の社会参加は男性が推進してきた権力分担による平和体制の推持ではなく、女性ならではの視点である次世代の子供達につながっていく新しい価値認識からの平和維持が新時代における視点であると考えている。』
チャウドリー大使は、国連代表としてシエラレオネ、リベリア、スリランカ、アフガニスタン 等で起こった権力闘争の紛争解決に当たった経験を活かし、新時代の平和維持には女性の社会参加が不可欠であると長年に渡り提言されています。
『コソボを訪問した際もそうでした。私は数々の国際会議に出席して会合を聞いていますが、いつも私が残念に思う事があります。
何故、この会合に女性が一人もいないのですか?と…。』
― 国連の役割
『今年の4月、パン・ギムン国連事務総長は問題解決の為の指針を発表しました。その指針とは?発展途上国の安全保障問題における女性の関与に関するデータを収集する事を各国に要請する内容でした。
私はパン事務総長から意見を聞かれ一つの質問をしました。
データ収集の完全な実施にはどの位の時間がかかると思いますか?と。
パン事務総長はどうしても、2〜5年の歳月を有するでしょう と答えました。
私は、各国のデータ収集は現況を把握する上で、大切な要項の一つだが、それだけでは何らの問題解決にはならない。特に発展途上の国々のリーダーと会談すると、国連が求めるデータ収集は時としてその国々にとって大きな負担でしかないという側面もある。
何より2年〜5年の歳月は重い…。
それよりもパン事務総長が世界のリーダー達と、もっとこの問題について議論を深め、各国が承認したResolution1325決議をどの様に行動に起こせるか?が大切であると提言しました。
又、パン事務総長との会談の席で、この決議を速進する為には民間の関与の重要性が二人の共通認識でした。
特に多国籍企業や国際NGO機関は、安全保障上の問題や、各国の法体系の違いを把握しており、重要なプレイヤーになると思われます。
例えば彼らがイラクで多くの人々を雇用するとします。彼らはイラクという国内の情勢を把握しながら安全保障の体系を法的に制御しつつ活動を行い、実績を上げている事例も少なくありません。利益と照らし合わせた女性の地位向上のガイドラインは国連決議の枠を超えて、彼ら独自の多くの行動指針を示してくれます。』
― Resolution1325の現実
『人々に決議1325に関心を集める事は容易ではありません。世界の人民の為の会議を提唱する国連にも止められない各国の現状あるのも事実です。
例えば2010年度、国連の調査によれば各国から集められた和平調停者が現地の女性に対して、性的虐待を行ったという報告が39のケースとして上がりましたが、国連事務局は残念ながらそのうちの13ケースしか対応が出来なかったといった現実もあります。それらの報告書を審議する過程で、各国の国連大使、又は代表がそれらを認めないケースもあり、それ以上の対応が出来なかった事が要因のひとつです。
私は、その場合の各国の国連代表に責務を負わせるべきだと提案しています。
現状では、処罰対応は給与の減棒等、あまりにも軽いものですから、罰則の方法も見直しが必要です。
ただ、それらはごく一部の国連の各国の代表者の例で、多くの国連のスタッフは決議1325の活動には希望を持っています。
世界の平和維持の為に、女性は男性よりも社会や家族に対して常に長期的視野に基づいた考え方を持っています。
男性は主に権力分担による平和への願望という今までの視点をなかなか変える事が出来ないのが現実です。
女性からの視点の重要性を世界規模でもう一度考える時期に来ています。
決議1325の採択から10周年に当たる今年は、それを実行に移す好機なのです。
今年の国連総会の場で、再度各国に強く働きかけていこうと思っています。』
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このインタビュー後に、FOUNAPにてチャウドリー大使は次の様に我々スタッフに指示されました。
『Resolution1325を私のスタッフである君達が、Asia-Pacificエリアでより多くの方々に拡く伝えていって下さい。
常に女性の視点からの問題提起に耳を傾けていって下さい。
最初はたった一人だけの創造が、やがて世界中に拡まっていく姿を、私は多くの事例から学びました。
それは決して不可能な事ではないのです。
"国連NGOスタッフ"として、"私のスタッフ"として、君達の提言する情熱に期待しています。
この問題の為なら、私は世界中のどこでも出掛ける準備があります。
国連ミレニアムのキャッチコピーである "Culture of Peace!(各国の文化風習等、違いを分かった上でつながっていく平和)"と"Resolution1325!"は、地球上の人間にとって最も大切な尊厳の一つである事に変わりはありません。
後は小さくても… 一つ一つ築いていく為に… 行動あるのみです! 』
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アンワルル K.チャウドリー
(FOUNAPオフィスにて)
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